「予期せぬ現実との衝突を生き抜く計画なんてありません。前もっていくら準備を整えても、現実の世界と会うときに、どうにか適応せざるを得ません。」
Project NordのCEO、トーベン・アンデルセンがコロナ禍が当社の日本進出計画に与えた影響及びその苦境から学んだ教訓を振り返って、このように語ります。
デンマーク生まれの北欧アートポスターのブランド、Project Nord。
北欧のデザイン文化と北欧企業ならではの環境意識を世界に広めることを目指し、2018年に設立されました。
トーベンは、美術系ビジネスに興味を抱いていたCOO、グレタ・ドバイと一緒に新しいプロジェクトを立ち上げることを決意。
2019年、初の海外進出として日本を決定。
北欧からあえて遠く離れた日本に進出を決めた理由は、CEOトーベンの両親が日本に長期間在住した経験があることや、北欧と日本に多くの文化的な共通点があることが決め手になったそうです。
もともと北欧の豊富なデザイン文化を生み出した背景には、モノを大切にする心や、素朴な暮らし方を好む文化があるそうです。
同様に、日本にも「わびさび」や「禅」に代表されるシンプルで自然と共生した生活が伝統的に尊重されているように、意外と簡単に文化的な共通点が見つけられます。
Project NordのCEO(最高経営責任者)Torben Andersen(トーベン・アンデルセン)
2019年の秋に日本市場への参入を着々と準備。 まずインスタグラムやSNSを中心にマーケティングに着手しました。 SNSで活躍する日本のインフルエンサーの方々からもとても良い反応があり、手応えを感じ、そこから一気に日本語サイトの公開まで進みました。 特に若い女性からの支持を得てProject Nordのポスターはお部屋のアクセントになることが評価されました。
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春に桜が咲き誇り、そして散っていくまでのストーリーを1枚のポスターに描いたポスター「LIFE OF A SAKURA」
春に桜が咲き誇り、そして散っていくまでのストーリを1枚のポスターに描いたポスター「LIFE OF A SAKURA」
日本への進出に邁進すると決心すると時を同じくして、新型コロナウイルスが世界で猛威を振るいはじめました。 国を跨ぐ移動ができなくなり、世界の物流にも大きな打撃が与えられました。 2020年3月中旬はデンマークでも感染者数が増加しはじめ、ロックダウン(都市封鎖)が発令されました。
COOのグレタ・ドバイが当時抱いていた感情を振り返ります。 「実は当初はそれほどおおきな影響がなかったんです。オフィスが閉鎖されたので従業員全員が出社しなくなり、在宅勤務を導入したくらいでした。3月末までは経営自体に特にインパクトがなかったと感じていました。」
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Project NordのCOO(最高執行責任者)Greta Dobai(グレタ・ドバイ)
しかし、3月末に事態は大きく変わります。
当時、ポスターの印刷を委託していたドイツの印刷所から突然の電話。 日本行きの航空機が次々と欠航になり、ポスターの発送ができなくなったと言われたのです。
しかし同時に日本からの注文は殺到。
「一時的な解決策として日本での印刷所を探すことに全身全霊を傾けましたが、大きいな壁にぶつかってしまったんです。オンデマンド印刷に対応できる企業でかつ、環境に優しいインクや展開されている5種類のサイズに対応できる印刷会社を見つけるのは非常に困難でした。一方で、日本からの注文は入り続けていました。」と話すグレタ。
苦境の時こそ、知恵を絞り、身体を動かす。先が見えない状態の中で、創造性を活かし、あらゆる手を打つ。
「色々検討した末、最後の手段として、日本にいるリセラー(小売店)に発送をお願いすることにしました。どうにかお客様にポスターを発送することを最優先しました。」
幸いなことに、日本のリセラーさんはこちらの突然のお願いに応えてくれて、円滑に配送を再開することができました。
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Project Nordが拠点とするデンマークの首都、コペンハーゲンの風景